岩手県大船渡市三陸町吉浜。吉浜湾の南側に位置し、2011年の東日本大震災において「湾口に出現した高さ約20メートルの直立した水の壁」という衝撃の目撃証言が残る「扇洞(おうぎほら)漁港」。ここは「奇跡の集落・吉浜」を構成する一角であり、かつては明治三陸津波の猛威を経験しながら、高台移転という不屈の決断によって再生を遂げた震災伝承の地です。釣り人にとっては、12月末まで「ヤリイカ・スルメイカ」の濃密な回遊が続き、43cmの良型アイナメが荒根から飛び出す、知る人ぞ知る一級の穴場。海底がむき出しになった「地獄のような光景」の記憶から、2025年最新の「大船渡応援ロゲイニング」の活気まで。圧倒的ボリュームで、扇洞漁港の深淵を解き明かします。
扇洞漁港の基本スペック・施設情報
扇洞漁港は、大船渡市が管理する第1種漁港です [9, 10]。吉浜湾の南岸、リアス式海岸の懐深く抱かれた場所に位置しており、周囲は豊かな森が海に迫る絶好の「魚つき林」の環境にあります。小規模ながら、2014年(平成26年)には防波堤の復旧が完了し、アワビやウニ、ワカメなどの磯漁業の拠点として大切に守られています 。
| 漁港名 | 扇洞漁港(おうぎほらぎょこう) |
|---|---|
| 漁港種類 | 第1種漁港(管理者:大船渡市) [9] |
| 所在地 | 岩手県大船渡市三陸町吉浜字扇洞 |
| 主なターゲット | ヤリイカ、スルメイカ、アイナメ、クロソイ、メバル、ヒラメ、マダラ |
| 駐車場 | あり(漁港内に駐車可能なスペースあり。作業エリアを避けてください) |
| トイレ | あり(近隣施設や吉浜駅方面に完備) |
| アクセス | 三陸沿岸道路「吉浜IC」より車で約10分。三陸鉄道「吉浜駅」より車で約5分。 |
地形と潮回り:20mの「水の壁」を遮った天然の入り江と沈み根の迷宮
扇洞漁港が突出したポテンシャルを持つ理由は、吉浜湾の閉塞的な地形と、海底に広がる複雑な岩礁帯にあります。2011年の震災時、湾口の鳥井島付近では高さ20mに及ぶ巨大な「水の壁」が出現しましたが、扇洞地区の住民は引き波で露出した「赤黒い海底」を見て、直感的に高台へ避難しました 。この激しい起伏を持つ海底地形こそが、魚たちにとって最高の隠れ家となり、同時に潮の流れを複雑にして豊富なプランクトンを供給しています。
2025年の最新調査では、冬場の「若潮」から「長潮」にかけて、潮位の変化が緩やかな時間帯でも、堤防先端付近の深場(水深8〜10m)にヤリイカやスルメイカの群れが安定して接岸しています 。夜間は常夜灯の明かりが岩礁の影を落とし、警戒心の強い大型メバルを引き出せる絶好の環境となります。
扇洞漁港・詳細ポイント攻略ガイド:2025年最新版
① 南防波堤・先端部(イカメタル&エギング)
扇洞の冬の華、ヤリイカ狙いの最有力ポイントです。2025年12月19日のレポートでは、夜間のエギングで「つ抜け(10杯超)」が定常化。自作のフラワー(イカ角)を用いた伝統的な釣法も健在で、引きの強い「デカスルメ」との格闘を楽しめます 。2025年末は例年以上に型が良く、正月用の高級食材を求めるアングラーで賑わっています。
② 堤防付け根・テトラ帯周辺(大型アイナメ&ソイ)
一発大物のロックフィッシュを狙うなら、外側の沈みテトラ周辺を攻めます。2025年12月20日の最新レポートでは、ここで粘り強く穴釣りを展開したアングラーが、43cmの見事なアイナメをキャッチしました 。ヒットルアーは「パドチュー(ゴマエビ)」や「熟成アクア スーパーどじょう」などの高誘引ワームが、低水温期のボトム攻略において絶対的な信頼を得ています 。
③ 港内スロープ・道路側(ファミリー・ライトゲーム)
足場が非常に良く、初心者や家族連れに最適です。2025年10月には、アジングで表層を誘っていたアングラーが豆アジを30匹以上キャッチ 。また、意外なゲストとして「キス」も混じり、魚種の多様性を証明しました 。夜間はメバリングでの数釣りが安定しており、20cm級のクロメバルやオウゴンムラソイがお土産を賑わせてくれます 。
「地獄のような光景」を越えて|高台移転と先人の知恵
扇洞漁港の周辺には、自然の猛威に打ち勝ってきた吉浜の人々の強靭な精神性が息づいています。
津波で露出した「赤黒い海底」の記憶
2011年3月11日。扇洞地区の住民、柏﨑博七氏は高台の庭から「地獄のような光景」を目撃しました。津波の直前、凄まじい勢いで潮が引き、根白漁港から扇洞の先まで海底がむき出しになり、普段は見えない岩が赤黒く輝いていたといいます 。この異常な引き波の直後に襲来した「垂直な水の壁」は、町を飲み込みましたが、明治時代に村長が決断した高台移転のおかげで、扇洞の人々は多くの命を守り抜くことができました 。
干鮑ブランド「吉品」の伝統
扇洞を含む吉浜地区は、世界最高級の干しアワビ「キッピンアワビ」の聖地です。明治時代、水上助三郎と伊藤菊之助という二人の偉人が、資源管理と「吊るし干し」の製法を確立しました [11, 8]。扇洞の海で水揚げされるアワビは、この伝統技術によって「海の宝石」へと姿を変え、今も香港の市場で最高級の評価を受け続けています [7, 8]。
2025年 扇洞漁港の最新ニュースとトピックス
2025年、扇洞・吉浜エリアでは復興の歩みと地域の活気溢れるイベントが話題となりました。
- 【2025年9月】第5回さんロゲ「大船渡応援ロゲイニング」: 2025年9月20日・21日に開催。山林火災の被災地支援のため、140名の出場者が扇洞漁港を含む名所を走り抜け、地域のレジリエンス(回復力)を発信しました 。
- 【最新】2025年12月28日 爆釣指数9.3を記録: 年末の釣り納めシーズン、吉浜湾内ではアイナメやヒラメの活性がピークに達し、爆釣指数9.3という驚異的な数値を記録。SNSでも「三陸の奇跡」として話題になりました 。
- 【SDGs】高校生発案の「秋刀魚節佃煮」販売: 2025年4月、地元店「黒船」が未利用素材を活用した新商品を発売。扇洞を訪れるアングラーの間でも「釣行の最高のお供」として人気を博しています 。
施設情報と吉浜の絶品グルメ「イカ腑カレー」
扇洞漁港での釣行を完璧なものにするなら、周辺の「魂の味」をチェックしましょう。
- イカ腑カレー(三陸駅前): 越喜来・吉浜湾で獲れたイカを丸ごと使い、イカの腑(肝)を隠し味に加えた濃厚なカレー。身の食感と肝のコクが絶妙なハーモニーを奏でる、2025年も一番人気のランチです 。
- ヤマキイチ商店「泳ぐホタテ」: 扇洞に隣接する吉浜の至宝。生きたまま届く圧倒的な鮮度は、東京の三つ星レストランも認める「奇跡の味」として知られています 。
- 道の駅さんりく「柿ソフトクリーム」: 地元特産「こえだ柿」を用いた濃厚なソフト。釣行後の糖分補給にこれ以上のものはありません 。
安全設備とルール:11.6mの壁とWUI火災への配慮
扇洞漁港は安全に配慮された港ですが、以下のルールを厳守しましょう。
- 11.6メートルの防潮堤: 津波から町を守る巨大な壁。2011年に目撃された20mの「水の壁」の記憶を忘れず、強い揺れを感じたら即座に高台(吉浜地区拠点センター方面)へ避難してください 。
- WUI(森林・市街地境界)火災への警戒: 2025年2月に発生した大規模山林火災の教訓を受け、漁港内での焚き火やBBQは厳禁です。防災意識を高く持ちましょう 。
- サケ・マスの採捕制限: 2025年も岩手県内全域で釣りによるサケの採捕は厳禁。ルールを守った健全な釣行を心がけましょう 。
