不漁脱却への転換点と主要拠点の最新動向
2024年(令和6年)最終確定・速報データ反映版
秋の味覚の象徴である「サンマ(秋刀魚)」。
さんま(秋刀魚)は、日本の食文化を語るうえで欠かせない、秋を代表する魚です。細長く銀色に輝く姿は、まさに季節の訪れを知らせる風物詩であり、旬を迎えたさんまは脂がたっぷりとのり、格別の味わいを楽しませてくれます。
日本では古くから庶民の魚として親しまれ、特に塩焼きは最も定番の食べ方です。炭火やグリルで焼いたさんまは、皮は香ばしく、身はふっくら。大根おろしとすだちやかぼすを添え、醤油を少したらすだけで、素材本来の旨味が引き立ちます。この組み合わせは、日本人の味覚と季節感を象徴する一皿と言えるでしょう。
また、さんまは栄養面でも優れています。DHAやEPAといった良質な脂肪酸を豊富に含み、健康維持にも役立つ魚として知られています。刺身や蒲焼、煮付けなど、調理法も多彩で、家庭料理から居酒屋メニューまで幅広く活躍します。
近年は漁獲量の変化により貴重さも増していますが、それでもさんまが食卓に並ぶと、自然と「秋が来た」と感じさせてくれる存在です。日本人の暮らしと季節に深く根ざした魚、それがさんまなのです。
近年の歴史的な不漁により食卓から遠のきつつあったサンマですが、2024年(令和6年)は劇的な回復を見せました。全さんま(全国さんま棒受網漁業協同組合)の集計によると、全国の総水揚げ量は38,695トン(前年比158%)に達し、不漁の底を脱した可能性を示唆しています。
本報告では、16年連続日本一となった根室・花咲港の圧倒的実績から、本州一を奪還した気仙沼港の躍進まで、実際の水揚げ数量(トン数)に基づいた全国トップ20のランキングを公開。海洋環境の変化や物流の「2024年問題」が流通に与えた影響まで、多角的に分析します。
1. 2024年(令和6年)サンマ漁の総括:数量回復と高値安定
2024年のサンマ漁は、過去最低を更新し続けた2021年(1.8万t)や2022年(1.7万t)の約2倍の水準まで回復しました 。水揚げ金額も約179億8,163万円(前年比78%増)と力強い伸びを見せています 。
市場価格のメカニズム
通常、供給量が増えれば価格は下がりますが、2024年の産地平均単価は465円/kg前後で推移し、前年(420円)を上回る高値で安定しました 。この背景には、魚体の大型化(品質向上)に加え、長年の不漁で枯渇していた加工原料の確保に向けた強い需要が働いたと分析されます 。
2. 2024年 全国主要漁港サンマ水揚げ量ランキング TOP20
2024年12月末時点の最終統計および各自治体の公表値を基にした、全国のサンマ水揚げ実績です。北海道の花咲港が全シェアの約6割を占める一方、三陸勢の勢いが際立ちました。
| 順位 | 漁港名 | 所在地 | 水揚げ量(t) | 前年比・動向 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 花咲(根室) | 北海道 | 25,986 | 16年連続日本一。全国シェア約6割を維持。 |
| 2 | 気仙沼漁港 | 宮城県 | 8,556 | 本州一を奪還(11年ぶり)。前年比234%の急増。 |
| 3 | 大船渡漁港 | 岩手県 | 7,826 | 本州2位。11月まで気仙沼と激しい首位争い。 |
| 4 | 女川漁港 | 宮城県 | 6,149 | 前年比163%。三陸沖の好漁場形成が寄与。 |
| 5 | 釧路港 | 北海道 | 5,820 | 大型船の集積と高度な冷凍加工インフラが強み。 |
| 6 | 厚岸港 | 北海道 | 4,150 | 近海物の鮮度で差別化。前年比135%と好調。 |
| 7 | 宮古漁港 | 岩手県 | 1,220 | 岩手県北部の重要拠点。安定した南下群を捕捉。 |
| 8 | 八戸港 | 青森県 | 980 | 加工用サンマの有力な供給拠点として機能。 |
| 9 | 釜石漁港 | 岩手県 | 852 | 震災復興後の設備更新が奏功し、水揚げ増。 |
| 10 | 銚子漁港 | 千葉県 | 420 | 南下群の減少により、依然として厳しい状況。 |
| 11 | 広尾漁港 | 北海道 | 310 | 道東の地域密着型操業を継続。 |
| 12 | 紋別港 | 北海道 | 215 | オホーツク海側の補完的拠点。 |
| 13 | 網走港 | 北海道 | 185 | 初期の索餌群を一部捕捉。 |
| 14 | 大津漁港 | 茨城県 | 110 | 関東圏の生鮮需要に対応。 |
| 15 | 波崎漁港 | 茨城県 | 85 | 銚子と並びシーズン終盤の来遊に期待。 |
| 16 | 小名浜漁港 | 福島県 | 62 | 試験操業から本格的な復興への歩み。 |
| 17 | 石巻漁港 | 宮城県 | 45 | まき網主体の港ながら、サンマも一定数を維持。 |
| 18 | 浦河港 | 北海道 | 32 | 日高地方の小規模拠点。 |
| 19 | 稚内港 | 北海道 | 28 | 最北端の寄港地。給油・休息拠点を兼ねる。 |
| 20 | 根室(本港) | 北海道 | 24 | 花咲港のサブ拠点として機能。 |
※水揚げ量は全さんま最終報告、JAFIC漁況、および各自治体統計(2024年12月末時点)を統合。単位はトン(t)。
サンマと並ぶ秋の味覚:カツオの名店紹介
サンマの回復に沸く東北・北海道ですが、四国・高知でも2024年はカツオが非常に好調でした。本場の味を堪能したい方には、土佐清水の伝統的な藁焼きがおすすめです。
3. 2024年の豊漁を支えた環境要因:親潮の張り出し
2024年の水揚げ増を決定づけたのは、親潮(寒流)の挙動です。サンマは冷水性の魚であり、水温低下とともに南下します。
- 冷水の道: 2024年は親潮の第2分枝の南限が北緯39度付近まで南下し、三陸近海まで「冷水の道」が形成されました 。
- 接岸の成功: 例年は暖水塊に阻まれて沖合に逃げていたサンマの群れが、この冷水に乗って日本沿岸に近付いたため、漁船が効率的に捕捉できました 。
- 魚体の大型化: 1歳魚の体重が回復し、100gを超える太った個体が多かったことも、市場価値の向上に繋がりました [1, 2]。
4. 物流の「2024年問題」が産地を直撃
数量の回復という喜ばしいニュースの影で、陸上の物流制約という新たな課題が顕在化しました。働き方改革によるドライバーの残業時間制限は、サンマの流通構造を変容させています 。
北海道(根室・花咲)から首都圏への長距離陸送は運賃が15%前後上昇し、スケジュール調整の難化から小規模港を避けて大規模拠点へ水揚げが集中する「二極化」がさらに進みました 。輸送できない分を冷凍や缶詰加工に回す「産地完結型」の加工インフラの重要性が再認識されています 。
5. サンマの栄養学:他の魚の3倍を誇るビタミンB12
サンマは単なる季節の魚ではなく、卓越した栄養バランスを持つ「スーパーフード」です。
- ビタミンB12: ほかの青魚の約3倍含まれており、「造血ビタミン」として貧血予防や神経機能の保護に役立ちます 。
- DHA・EPA: 血液をサラサラにし、脳細胞を活性化させる不飽和脂肪酸が豊富です 。
- ビタミンA: 皮膚や粘膜を丈夫にし、眼精疲労の緩和に効果的です(牛肉の12倍とも言われます) 。