岩手県大船渡市三陸町吉浜、リアス式海岸の深い入り江の最奥に位置し、100年以上前の村長・新沼武右衛門が下した「全戸高台移転」という英断が2011年の惨劇から村を救った「奇跡の集落・吉浜」の一角を担う「増館（ますだて）漁港」。ここは世界最高級のアワビブランド「キッピン（吉品）」の故郷であり、ユネスコ無形文化遺産「吉浜のスネカ」の鳴らすアワビの殻の音が闇に響く、伝統と防災が結晶した港です。釣り人にとっては、2025年12月に「43cmの良型アイナメ」が報告され、秋には豆アジが乱舞する「ロックフィッシュの隠れ里」。1896年の明治三陸大津波の教訓が生んだ「下通り」の記憶から、2025年最新の「大船渡復興割」による賑わい、そして名物「泳ぐホタテ」の鮮度まで。圧倒的ボリュームで、増館漁港の真髄を解き明かします。
増館漁港の基本スペック・施設情報
増館漁港は、大船渡市が管理する第1種漁港です [1, 2]。吉浜湾の奥部、北側の険しい山々に守られた静かな入り江に位置しています。2017年（平成29年）には震災からの復旧工事が完了し、防波堤や荷捌き場が整備されました 。世界一の品質を誇る吉浜アワビやウニの養殖拠点として、地元の「吉浜元気組」を筆頭とする若手漁師たちの活動も盛んな、活気ある現役の仕事場です。
| 漁港名 | 増館漁港（ますだてぎょこう） |
|---|---|
| 漁港種類 | 第1種漁港（管理者：大船渡市） [2] |
| 所在地 | 岩手県大船渡市三陸町吉浜字増館 |
| 主なターゲット | アイナメ、メバル、クロソイ、アジ、サバ、タナゴ、ヒラメ |
| 駐車場 | あり（漁港内に広い駐車スペースあり。漁業活動を優先してください） |
| トイレ | あり（吉浜駅周辺や隣接施設に完備） |
| アクセス | 三陸沿岸道路「吉浜IC」より車で約10分。三陸鉄道「吉浜駅」より車で約5分。 |
地形と潮回り：100年の決断を守る「凪のワンド」と複雑な沈み根
増館漁港が安定した魚影を誇る理由は、吉浜湾の最も奥まった場所に位置する「天然の養生場」としての特性にあります。背後の山々から注ぐ栄養豊かな地下水が海へと流れ込み、これがプランクトンを育み、アジや根魚を引き寄せています [3]。海底は砂地と、リアス海岸特有の複雑な岩礁帯（根）が入り混じっており、特に冬季の低水温期にはロックフィッシュの格好の隠れ家となります。
2025年の最新データによれば、冬場でも水温の低下が比較的緩やかで、12月後半までヤリイカの回遊が確認されています [4]。潮回りについては、湾奥のため流れは緩やかですが、上げ潮時に先端部付近で発生する緩やかな「ヨレ」にベイトが溜まりやすく、アジングやメバリングの絶好のコンタクトポイントとして機能しています [5]。
増館漁港・詳細ポイント攻略ガイド：2025年最新版
① メイン防波堤・先端エリア（アイナメ＆ロックフィッシュ）
増館で最も実績が安定しているエリアです。2025年12月20日の最新レポートでは、ここで粘り強く底を叩いていたアングラーが、43cmの見事なアイナメをキャッチしています 。ヒットルアーは「エコギア 熟成アクア スーパーどじょう」などの高誘引系ワーム。堤防の基礎周りにある「沈みテトラ」や隙間を丁寧に探るのが、2025年の必勝パターンです [5]。
② 港内スロープ＆常夜灯周辺（ナイトゲーム＆豆アジ）
足場が非常に良く、夜間も明るいためファミリーやライトゲーマーに最適。2025年10月のデータでは、ここで豆アジ（14cm〜17cm）が30匹以上の数釣り実績を残しています [5]。ヒットリグは0.5g〜1gの軽量ジグヘッド。2025年の新しい傾向として、夜間に大型のタナゴや珍しい「キス」が混じる日もあり、魚種の多様性を体験できるポイントです [5]。
③ 北側・磯場隣接域（大型根魚狙い）
一発大物を狙うなら、磯場に直結した堤防付け根エリア。2025年冬、ここでは40cm近いクロソイやベッコウゾイの反応が上がっています。根が非常に荒いため、テキサスリグ（14g以上）での強気な攻めが推奨されます。足元が滑りやすいため、必ずスパイクシューズとライフジャケットを着用してください [6]。
新沼武右衛門の魂と「吉品」の誇り｜奇跡の集落に刻まれた不屈の歴史
増館漁港の周囲には、自然の猛威に打ち勝ってきた吉浜の人々の強靭な精神性が息づいています。
「武右衛門」が決断した高台移転
1896年（明治29年）の明治三陸大津波により、吉浜村は甚大な被害を受けました [7, 8]。これを受け、当時の村長・新沼武右衛門（武左衛門は誤記 [7]）は、被災した居住域をすべて高台へと移転させる方針を打ち出しました。津波が到達しなかった地点を基準に造られた「下通り（しもどおり）」という道は、それより海側には家を建てないという鉄の規律となり、これが2011年の東日本大震災において「死者ゼロ（海辺での行方不明者1名除く）」という驚異のレジリエンスを支えたのです [8, 9]。
世界一の干鮑「キッピン」と「スネカ」
江戸時代から続く吉浜の伝統は、今や世界的な文化遺産です。世界最高級の干しアワビ「キッピン（吉品）アワビ」は、明治の偉人・伊藤菊之助が確立した「吊るし干し」製法により、香港の市場で宝石として珍重されています [10, 3]。また、腰にアワビの殻をぶら下げて歩くユネスコ無形文化遺産「吉浜のスネカ」は、怠け者を戒め、増館の豊かな海を祈願する里の守護神として今も畏怖されています [11, 12]。
2025年 増館漁港の最新ニュースとトピックス
2025年、増館・吉浜地区では伝統の継承と震災からの飛躍を象徴するニュースが相次ぎました。
- 【2025年12月】大船渡復興割の期間延長： 2026年1月30日まで宿泊最大3,000円引き＋地域クーポンが進呈されるキャンペーンが延長 。遠征アングラーにとって吉浜宿泊の大きなチャンスとなっています。
- 【最新】2025年12月20日 43cmアイナメ達成： 地元アングラーにより、念願の40UPとなる良型アイナメがキャッチされ、SNSで吉浜のポテンシャルが再評価されました [5]。
- 【2025年8月】三陸・大船渡夏まつり花火大会： 約8,000発の花火が打ち上げられ、吉浜湾からもその巨大な光輪が望め、復興の光に多くの人々が酔いしれました 。
施設情報と吉浜の絶品グルメ「泳ぐホタテ」
増館漁港での釣行を完璧なものにするなら、周辺の「究極の味」をチェックしましょう。
- ヤマキイチ商店「泳ぐホタテ」： 吉浜が世界に誇る至宝。生きたまま届く圧倒的な鮮度は、東京の三つ星レストランも絶賛する「奇跡の味」です 。
- お食事処 浜どこ（道の駅さんりく）： 当地特産の巨大ホタテとネギトロが乗った「海鮮メカブ丼」や「浜どこラーメン」は、釣りの後の胃袋を最高に満たしてくれます 。
- 柿ソフトクリーム： 道の駅さんりくの名物。特産「こえだ柿」を用いた濃厚なソフトは、釣行後のリフレッシュに最適です [13]。
安全設備とルール：11.6mの壁と「下通り」の教訓
増館漁港は近代的な防災インフラを誇りますが、以下のルールを厳守しましょう。
- 11.6メートルの防潮堤： 津波から町を守る巨大な壁。震災時に県道付近（海抜20m）まで波が迫った記憶を忘れず、強い揺れを感じたら即座に「下通り」より上方の高台へ避難してください [14, 9]。
- サケ・ハタハタの採捕制限： 2025年も岩手県全域で釣りによるサケの採捕は厳禁 。ハタハタの全長制限（20cm未満禁止）も遵守しましょう 。
- 駐車場マナー： 漁港内は漁師さんの真剣な仕事場です。網の修繕エリアや重機の導線を絶対に塞がないよう、指定の場所に駐車してください [6]。
