岩手県久慈市、久慈湾の南端に位置し、有家川が運ぶ滋養豊かな淡水と日本海の奔流が交差する「舟渡(ふなと)漁港」。ここは1971年(昭和46年)に二子地区と大尻地区という二つの漁村が「合併」という歴史的決断を経て誕生した、三陸北部でも特異な成り立ちを持つ港です。広大な砂浜と急峻な岩礁がパッチワークのように入り混じる地形は、2025年には「29cmの泣き尺アジ」や「80cmオーバーのランカーシーバス」を育む、まさに「生命のジャンクション」。漂砂との百年越しの闘いから、承久の変に遡る「舟でお渡り」の地名伝説、そして2025年最新の釣果データまで、圧倒的ボリュームで舟渡漁港のすべてを網羅します。
舟渡漁港の基本スペック・施設情報
舟渡漁港は、岩手県久慈市にある第1種漁港です [1]。久慈湊漁港の南側に隣接し、かつての二子(ふたご)漁港と大尻(おおじり)漁港が統合されたことで、非常に広範な海岸線をカバーする拠点となりました [2, 3]。有家川の河口付近に位置するため、汽水域特有の豊かな生態系が釣り人を魅了して止みません。
| 漁港名 | 舟渡漁港(ふなとぎょこう) |
|---|---|
| 漁港種類 | 第1種漁港(管理者:久慈市) [1] |
| 所在地 | 岩手県久慈市二子町・大尻地内 |
| 主なターゲット | アジ(デカアジ)、シーバス、ヒラメ、マダコ、アイナメ、クロダイ、ハタハタ、ヤリイカ |
| 駐車場 | あり(無料・防波堤付近に駐車可能スペースあり。漁業車両優先) |
| トイレ | なし(近隣の久慈湊地区の公衆トイレ、またはコンビニを事前に利用推奨) |
| アクセス | 三陸沿岸道路「久慈IC」より車で約10分。国道45号線からアクセス良好 |
地形と潮回り:汽水と漂砂が作り出す「北三陸のハントポイント」
舟渡漁港のポテンシャルを決定づけているのは、港の湾口部が「有家川」の河口に近接しているという地理的特性です [2, 3]。川から供給される有機物豊富な淡水が、日本海を北上する対馬暖流の分流とぶつかり、堤防周辺に強力な「潮目」を形成します。海底は砂地をベースに、過去の改修工事で投入された大量のテトラポッドや石積みが沈んでおり、これが魚類の理想的な産卵・育成場を提供しています。
一方で、この立地は「漂砂(ひょうさ)」という自然の猛威との戦いの歴史でもあります [3]。波浪によって運ばれる砂が泊地内に堆積しやすいため、1982年度以降、集中的な漂砂対策が実施されてきました。この動的な環境が、常に新しい海底地形(ヨブやカケアガリ)を作り出し、ヒラメやマゴチにとって最高の待ち伏せポイントとなっています。2025年の調査では、特に「下げ潮」のタイミングで河口からの流れが強まる際、大型のアイナメが活性化する傾向が顕著に確認されています [3]。
舟渡漁港・詳細ポイント攻略ガイド:2025年最新版
① 湊地区側・メイン防波堤(赤灯台)先端
舟渡漁港で最も潮通しが良く、実績の高い一級ポイントです。2025年12月26日の最新ニュースでは、ここで29cmの「泣き尺アジ」がキャッチされました。また、8月には30cmオーバーのショゴ(カンパチの幼魚)の回遊も確認されており、ライトショアジギングの絶好の戦場です。先端付近は水深が7メートル以上に達し、冬場にはこの深場を求めて「ヤリイカ」や「ハタハタ」が接岸します。足場が高い箇所があるため、必ず長めのタモ網を準備しましょう [4]。
② 有家川河口・導流堤周辺(シーバス&フラットフィッシュ)
ルアーマンにとって、ここは「夢の場所」です。淡水の影響を強く受けるため、ベイトフィッシュが溜まりやすく、ランカーサイズのシーバス(スズキ)が期待できます [5]。2025年シーズンは、水門開放時の濁りが入ったタイミングで80cmを超える個体の報告も寄せられています。また、秋には「落ちアユ」を意識したヒラメの活性も高く、40cmアップの実績が安定しています。生き餌のアジを確保しての「泳がせ釣り」も非常に有効なエリアです。
③ 大尻地区・船溜まり護岸(ファミリー・夜釣り)
足場が完璧に整備されており、車を近くに停めて釣りができるファミリーに最適なエリアです。2025年11月のレポートでは、サビキ釣りで豆アジやウマヅラハギが連発し、お土産確保に沸きました [6]。夜間は常夜灯が点灯し、メバリングでの20cmクラスの実績も安定しています。最近のトレンドは「ケイテック イージーシェイカー」のグローカラー。ボトム付近をデッドスローで通すと、尺近いクロソイが出ることもあります [7]。
承久の変と「舟でお渡り」|舟渡に刻まれた皇族の記憶
「舟渡(ふなと)」という地名には、鎌倉時代の歴史の荒波に翻弄された高貴な人物の伝説が残されています。
順徳上皇の脱出と地名の由来
伝説によれば、1221年の「承久の変」で佐渡へ配流された順徳上皇が、密かに島を脱出してこの地に辿り着いたと言い伝えられています。上皇が荒川(現在の有家川に関連)を渡る際、村人が舟を出して丁重に「お渡し」したことから「舟渡」という地名が生まれたという説があります。上皇は観音様と天神様を厚く信仰しており、その信仰の心が現在の舟渡地区の静謐で礼節を重んじる気風に繋がっていると言われています。
二子と大尻、二つの誇りの統合
現在の舟渡漁港は、昭和46年に二子漁港と大尻漁港が合併して誕生しました [2]。もともとは独立した二つの集落でしたが、漁船の大型化という時代の要請に応えるため、一つにまとまりました。この統合により、インフラ整備が加速し、三陸北部の水産業を支える重要拠点へと成長しました。港の風景の中に、それぞれの村が築き上げた石積みの堤防跡が歴史の層として残っているのが舟渡の趣です [3]。
2025年 舟渡漁港の最新ニュースとトピックス
2025年、舟渡周辺ではインフラの更新と豊かな自然の恵みが話題を呼んでいます。
- 【2025年12月】アジング大盛況: 12月後半、海水温が安定していた時期に25cm〜29cmの良型アジが港内に入り、ライトゲームファンで連日賑わいました。
- 【最新】漁港検診の実施: 2025年8月18日から20日にかけて、導流堤や防波堤の経年劣化を診断する「漁港検診」が実施されました [3]。これにより、将来の災害リスクに対する安全性が再確認されています。
- 【話題】ドローンによる漂砂モニタリング: 有家川からの土砂堆積を未然に防ぐため、ドローンを活用した最新の測量技術が導入され、効率的なメンテナンスが可能になりました。
施設情報と「久慈・北三陸」の絶品グルメ
舟渡漁港への釣行を完璧なものにするために、周辺の「魂の味」をチェックしましょう。
- まめぶ汁: 久慈の代表的な郷土料理。くるみと黒砂糖を入れた団子が入った甘じょっぱい汁は、釣りの後の冷えた体に染み渡ります [8]。久慈駅前の「山海里」などで堪能できます。
- お食事処 喜多八食堂: 漁港から車で数分。その日に水揚げされたばかりのネタを使った「特上生うに丼(3,500円)」や、磯の香りがたまらない「ほやラーメン」が人気です 。
- 道の駅くじ「やませ土風館」: 釣りの帰りに立ち寄り、地元産の「黒豆」や「琥珀」の加工品をお土産にするのが定番コースです。
駐車場と安全対策:物流車両と漂砂に注意
舟渡漁港は現役の漁業拠点です。以下のルールを厳守しましょう。
- 駐車場マナー: 岸壁沿いにスペースがありますが、漁師さんのフォークリフトやトラックの導線を絶対に塞がないでください。
- 河口の急流: 有家川の河口付近は、増水時や引き潮時に非常に強い流れが発生します。フローティングベストの着用は必須です [3]。
- トイレ事情: 港内にはありません。車で数分の久慈湊周辺の施設を事前に利用するのが鉄則です。
